このシリーズではテクニック志向を強化する方向性で筋トレを活用するにはどうすればいいか考えます。サッカーにおけるフィジカルコンタクトでは駆け引きなどの技術的要素が高いレベルで求められます。駆け引きを最大限活かすためにはフィジカル強化が欠かせません。一般に言われるフィジカルとは少し違うかもしれませんが、この方法も数ある筋力トレーニングのひとつの手段だということを踏まえながら、フィジカルという技術をうまく使うために望ましいトレーニングを考えていきましょう。
一般に、フィジカルを強化するのにオーソドックスなアプローチは、
- 体幹トレでインナーマッスルを鍛える
- ウェイトトレでアウターマッスルを鍛える
- 栄養状態を改善させ、トレーニング効果を高める
- 入念な疲労対策(休養、栄養、年間トレーニング計画)
- 強化されたフィジカルをサッカーに活かすための特別練習
があります。
F太郎=FRさんのコメントより「高校サッカー部に必要な筋トレメニュー」
ここでは筋トレに対する考え方を一度整理してみましょう。
筋トレの部位
まず、筋トレでは負荷をかける体の部位の違いを理解しなければなりません。
- (a)下半身トレーニング(木でいう根の部分)
- (b)体幹トレーニング(木でいう幹の部分)
- (c)上半身トレーニング(木でいう枝の部分)
これらを必要に応じてバランスよく鍛えることが重要です。
筋トレの手順
footballhack.jpではやみくもに筋トレを推奨するようなことはしません。必ずサッカーの試合で必要なスキルと紐付けて考えます。そのほうが筋トレに対するモチベーションが上がるばかりでなく、パフォーマンス向上にも直結すると考えるからです。実際にどのような順序で筋トレに向かえばいいか羅列します。
【第1段階】 気付きのフェーズ
- 技術を理解する
- 実際の試合の中でトッププロ選手たちがその技術を使っていることを発見する
- 自分の体で動作を真似してみる
この段階では強烈な体験をすることが必要かと思います。強烈な体験とはフィジカルで負けたとか(悔しい気持ち)、理解できないほど完膚なきまでに叩きのめされたとか(絶望)、チームのエースが活躍できる理由がやっとわかった(感動)とかです。このような大きな気持の変化が向上心に火を付けます。
<参考>遠藤保仁選手がティエリ・アンリ選手から受けた感動体験
向上心が湧いてきさえすれば、その後の取り組み方は劇的に変化します。”必要は発明の母”というように人間は必要性に駆られて初めて創造的になれるからです。憧れだけではスター選手にはなれません。まずは、心が大きく動かされる体験をしましょう!
【第2段階】 試行のフェーズ
- 動きのある中で実践に移す
- 競争の中で実践に移す
- 自分に筋力が足りていないことを自覚する
チーム練習あるいはチームメイトとの自主練習の中で、新しいプレーを試してみます。そのスキルを習得することでパフォーマンスは向上しそうですか?そのスキルを発揮するための筋力は十分に備わっていますか?プレースタイルが変わることで自分に必要となるトレーニング量も変わります。「自分の身体能力を高めるんだ」という強い自覚を持つことがこのフェーズの目標です。
【第3段階】 強化のフェーズ
- トレーニング計画を策定する
- トレーニングメニューを実施する
- 栄養・睡眠に気をつけ、生活習慣を改善する
上達には日々の積み重ねが大事です。アスリートを自負するなら(毎日練習できるなら)トレーニング量を増やすより、トレーニングの質と生活習慣を改善しましょう。
できれば栄養と睡眠の改善については筋トレより先に知識として入れておくようにしましょう。
この部分はF太郎さんに任せましょう。
【成果を確かめる】 実戦のフェーズ
- 試合の中でトレーニングの効果を実感する
筋トレで鍛えたことによって、より楽に、より速く、より高くプレーできるようになると思います。初めは自己評価で構いません。過去と比較して、感覚的に自分が上手くなったとか強くなったと思えれば、まずは成功です。継続していれば、そのうちチームメイトやコーチからの評価も上がってくるでしょう。他人から評価されるようになれば、それは間違いなく上達の証になります。自信をつけてください。
いくら筋肉量が増えたとしても、プレーのパフォーマンスが向上しなければ意味はありません。自己満足で終わるのではなく、必ず他己評価を得られるまで努力を続けましょう。
【反省】 継続のサイクル
- 成果が上がった場合、より負荷の高い筋トレを実施して、さらなる向上を目指す
- 成果が上がった場合、現状維持に努めながら、他のスキル獲得と新しい筋トレに励む
- 成果が上がらなかった場合、原因を分析する
成果が上がらなかった場合
成果が上がらない(コーチからの評価を得られない)時は一度トレーニングを見なおしてみると良いかもしれません。頑張っているのに成果が出ないと、気持ちが萎えてきてトレーニングにも身が入らないし、結果的にトレーニングを途中で止めることになるかもしれません。何事も継続が肝心であり、努力をやめてしまった途端に、上達への道筋は途切れてしまいます。
どんなに小さなことでも続けていれば必ず成果は現れます。しかし、同じことをやり続ける必要はありません。やり方を少し変えるだけで大きな成長につながることはよくあることです。上手くいかなかったのは何が原因なのか、成功をつかむにはどこを変えればいいのか。それに気づくことができたのなら、あなたが費やした時間は無駄ではないのです。
「この何ヶ月かの努力が水の泡だ」なんて思う前に、成果が上がらなかった理由を分析し、新たな取り組みを始めましょう!
原因を分析する
原因はいろいろあると思いますが、ここでは主に以下の項目にそって原因を探してみましょう。
- 技術の分析は正しかったか
- 実戦に活かせる身体操作感覚は正しかったか
- トレーニング計画に無理はなかったか
- トレーニングメニューは効果的だったか
- 生活習慣は良好か
まず、技術の分析をやり直してみましょう。あなたが習得したい技術は本当にプロ選手たちが使っていますか?ここを間違えると以下の全てのトレーニング行程が全て間違ったものになるので慎重に考えましょう。特に空想や漫画から取り入れたアイディアは現実的ではないものが多いので注意が必要です。技術の分析が正しいかどうかは、コーチや大人のプレーヤーに聞いたり、本を読んだりして確かめるといいでしょう。
身体操作感覚とはそのプレーをしようとするときの意識や注意点です。動作を意識するときのコトバやポイントを整理するだけで、プレーの質が格段に良くなったりします。コーチやチームメイトの中で上手い選手に話を聞いて議論してみるといいでしょう。
トレーニング計画は子供の知識では正しく組むことはできないです。大人でも勉強熱心なひとくらいしかきちんとした知識は持っていないのが現状です。このへんはF太郎さんに任せましょう。
トレーニングメニューは①方法②負荷③回数④インターバルなどの要素で決まると思います。正しい方法で行っていても、インターバルや回数が適切でない場合、期待した効果がでないことがあります。コーチに聞いたり、本を読むなどして、自分で試行錯誤して改善をしましょう。
ここまで正しいアプローチでトレーニングを積み重ねてきても、なかなか効果が出ない時は生活習慣が悪いのかもしれません。単純に食べる量を増やしたり、1時間早く寝るようにするだけで効果が劇的に現れる場合があります。常に自己管理の意識を持つことは、良い選手になるための必要条件です。
以上、筋トレに励む前に考えてほしいことをまとめました。何事も正しい方法で行う努力は、間違った方法で行う努力の数倍の威力を発揮します。
「正しいやり方を覚える」ことは、その後の努力の効果を何倍にも増幅してくれる「魔法」なのだけれど、驚くほど多くの人が軽んじている。優れた結果を出す人はみんなこの「魔法」を駆使しているというのに。
— BOTでNO LOVE, NO TEAM (@nolovesp) 2015, 1月 31
この記事も例によって更新制にします。