よく公園に行くのですが、サッカーをしているパパと子供を目にします。その時にちょっと思うことがあって書いてみたいと思います。
子供とサッカーをするパパっていうシチュエーションを想像したときに、1つはサッカーをやり始めの小さな子供とそのパパと言う組み合わせと、もう一つは、小学生くらいの子供とその親と言う組み合わせがあります。
1つ目の例で言うと、サッカーをやり始めの子供っていうのはほとんどが未就学児か、小学校低学年でまだまだ思うように体動かすことが難しい年頃です。そういった子供にボールを与えたときに、何が起きるかって言う話をします。ボールを与えると言った場合、通常のサッカーボールを指します。子供用の4号ボールか気の利いた親なら3号球を与えるでしょう。
そうなると、子供にとっては、人工皮革で縫い付けられたポールと言うのは、あまりにも重すぎてボールを蹴った反動でバランスを崩してしまったりそもそもボールが遠くに蹴れないことからやる気をなくしたりすることがあります。ですから、未就学児の子供には、ゴムボールのような軽くてよく弾むボールを与えると良いと僕は考えます。
何より達成感を感じてもらうことが大切ですからね。
そこで公園でよく目にする残念な事象っていうのがありまして、サッカー経験のありそうなお父さんがドリブルをして子供がそのボールを追いかけると言う構図です。お父さんは華麗な足技で子供をおちょくっています。また抜きされたり、また抜き失敗して子供の足にボールが引っかかり転んでしまいます。傍目からすると、サッカーの上手なお父さんと一緒にサッカーができて、子供は幸せだなと考えてしまいがちですが、子供の気持ちとしてはどうなのでしょうか
ボールを蹴りたいのは、子供本人なのに、ボールをずっと触ってるのはお父さんであり、しかもあとちょっとで触れそうなところで、鼻先でドリブルでかわされてとても悔しい。こんな気持ちでずっとボールを追い続けられるはずがありません。何度か子供が拗ねてしまい別の遊びに向かうところを目にしました。お父さんは久しぶりのサッカーで気持ちが上がってしまったのか、子供にボールを渡そうと言う考えは一切持たず、自慢の足技で子供を翻弄してしまいました。
これは誰でもやってしまうような失敗です。学べる事はたくさんあります。指導するときに我慢が必要だということが、これほどまでに端的に示された例はないでしょう。
また小学生くらいとその親という組み合わせでは別の例を目にしました。
父親は熱心にドリブルだとかキックのフォームを指導しています。指導があまりにも熱心でああではないこうではないと手取り足取りのコミュニケーションをしています。これが正しいんだと言う形を押し付けるやり方で、子供のモチベーションはどんどん落ちていってしまいます。子供は楽しくなさそうな顔をしています。
サッカーをやり始めの子供の心はまだ柔らかく、どんなものでも吸収してどんなものにも向かう好奇心に満ち溢れています。その心を刺激してより高い集中力を持ったステージへ向かわせるには達成感と楽しさが必要不可欠です。この2つを感じ取らせるためには子供が主体となって遊べる何かが必要です。例えば、ボールを蹴るだけでも良いですし、ボールを追いかけたり、ボールを投げたりするのでも良いと思います
子供の運動はまだまだぎこちなさが多いですし、神経が複雑につながっていないので、運動行動自体が単調に見えることもあると思います。しかし、それは、複雑な運動行動を獲得するまでの過程であり、その瞬間瞬間で何かをつかもうと模索している姿に他なりません。この過程を刺激し、応援してあげることが、まずは親子でできるコミニケーションではないでしょうか。そこでいくつか僕から提案できることを書いてみたいと思います。
未就学児の子供はボールを目で追うということがまだ難しい年頃でもあります。グラウンダーのポールを追いかけて体の真横を通り過ぎたあと、振り返ってボールを追いかけて、ボールがかなり減速するまで触れることができないということがあります。これはボールを目で追えないのではなくて、ボールの軌道を予測できないことから起きる現象です。予測は多種多様な入力の積み上げによってようやく成り立つものですから、ボールを取れない子供を責めてはいけません。いろいろな球種のボールを試して、自分自身でボールの軌道を予測することを動機づけてあげないといけません。
ボールの軌道の予測力を育む1つの方法は、土のグラウンドでしたら、土の上に線を書いて、その上をボールを転がすと言う方法があります。親側から放射状にいくつかの線を書いて「次はこの線に転がすよー」と告知してからボールを転がします。子供はボールを捕らえたらドリブルしてゴールにシュート。ドリブルが難しい年頃なら手で持って運んでもいいでしょう。
こう言う時に役立つのはPUGGなどの簡易組み立てゴールです。
他には、芝生の上なら、ロープを置いて、その上をボールを転がすと言う方法もあります。ボールの軌道を視覚化することで、軌道の予測をすることの動機付けやサポートになります。
後は高く、弾むボールへの対処です。高いボールと言うのは物理エネルギーで言っても高いエネルギーを持ってますし、子供は本能的に怖がります。ですから高いボールに早くから慣れると言う事は、その後においてボールに怖がらずに関わる時間をたくさん確保すると言う意味でも非常に重要だと考えています。柔らかいボールでしたら高く蹴り上げても怖さを感じませんし、高ければ高いほど子供は喜びます。ボールを高く、蹴り上げて追いかけさせると盛り上がります。
そしてバウンドボールも大事です。バウンド軌道は大人でも予測が難しく、処理を誤ってあわや失点なんてプレーはプロでも珍しくありません。バウンドボールの予測で秀でれば、試合でもかなり有利です。この辺は拙著「懐理論」kindle本の浮き玉のドリブルの項にまとめたので是非ご一読を。
バウンド処理はお腹から行くのがまずは簡単でしょうし、その後の駆け引き技の醸成に一役買います。子供と向かい合ってバウンドボールの投げ合いをしてみてください。ボールが弾むという3次元の軌道予測にまずは目を慣れさせることが必要です。慣れてきたらショートバウンドをたくさん投げてあげて、前屈みにお腹でキャッチする練習をさせてみてください。恐怖心を軽減することでプレーの可能性は広がります。
なんにしても、指導したりなにか子供と一緒にやる時に、自分の考えを披露することを抑制するには、かなりの自制心が必要になります。我慢が必要だと言うのは、大人には失敗する未来が見えていても、子供にはまだ想像できないから、そうならないように口出ししたくなるのですね。
でも、敢えて失敗させる、そして一緒に振り返って考えると言う時間が大切です。取り返しのつかない失敗なんて、数えるほどしかないと思うんです。そうじゃなければ見守って、成長を待つのが良いと思います。サッカーは続けてればいずれ誰でも上手くなります。いずれ出来るようになる、から今は敢えて口出ししないという心構えでいることが大事なんだと思います。