前回のエントリで手押しが技術として存在することと、手押しの重要性を認識できたと思います。今回はその手押しをトレーニングの中に組み込む方法を考えます。また、この方法は気づきのフェーズを通過していない選手に対しても効果があります。個人的な体験として【第1段階】を経ていなくても、チーム練習で【第2段階】を経験させてしまえば、強制的に手押しを習得させることが出来るのです。
【第2段階】 試行のフェーズ
- 動きのある中で実践に移す
- 競争の中で実践に移す
- 自分に筋力が足りていないことを自覚する
「動きのある中で実践に移す」とはアナリティックトレーニングを実施するということです。
より高度な解説だとこういうのもあります。
Vol.74
『遊びながらゲームを理解するTGFU方法論』馬場 源徳
積み上げが0の状態からいきなりゲーム形式で試せっていうのはかなり難易度が高いです。まず一度は技術だけを取り出した練習を組んで、体を動かしてみることが大事です。その中でフィードバックを得ることで、自ら改善点を見つけ出し上達していく道筋を見つけます。
手押しの習得の場合、人の体と接触することに初めは抵抗があるかもしれないので、ここではラグビータックルパッド(クッション)を使ったアジリティドリルを考案してみました。
これなんか高いので、普通に100均やホームセンターに売っているクッションを使ったほうがいいです。
やり方は簡単、いつものアジリティトレの中に、人を立たせてその人にクッションを持ってもらいます。選手はクッションを手で押してからダッシュします。
図で言うとオレンジの人が緑のクッションを持っているので、水色の選手はそれを押して出ていきます。オレンジの人の”当たり方”が下手だと手押しがスカってしまうので、注意が必要です。オレンジの人は両腕を一気に伸ばして、水色の選手をクッションで押し出すように(真ん中の走るラインから弾き出すように)タックルします。水色の選手はクッションを使ったタックルを手押しでいなすように駆け抜けます。自分への攻撃をうまく受け流して前への推進力に変えるイメージです。
アジリティトレの中に組み込むことで、「いつもやっている、よくわかるトレーニングが少し新しくなった」と思わせることが重要です。新しいことを始める時に全てを刷新すると、適応するのに時間がかかります。ちょっとした変化を加える事で自然に新しいことを習得できるように思案してみましょう。
次に実戦に近い状況でトレーニングしてみましょう。
2人の選手が競争します。遠くに置いたボールを先に触れば勝ちです。
片方の選手は両手を背中で組んだ状態からスタートします。
これがハンデになります。
ハンデを背負った選手がスタートのコールをします。
コンマ何秒か早くスタートできても、密着した並走状態で腕を使えなければ、それが大きなハンデになることを実感するでしょう。
シュートにつなげるように練習をアレンジしてもいいかもしれません。
実際にやってみた動画があるので載せておきます。
これをやると翌日、確実に腕が筋肉痛になります。筋肉痛になるということが大事です。筋肉痛になるということは普段、この部位の筋肉をサッカーの中で使えてないということだからです。筋肉痛は恥ずべきことであると同時に、やる気を引き起こしてくれる体からのサインです。
サッカーが上手くなるためには筋肉が必要なんだ
ここまできちんとエントリを追ってきた人なら論理的に納得できると思います。
筋トレに目覚めることでより高いステージに登れるのです。筋トレをすれば技術をもっと上手く発揮できるようになりますし、個の能力が上がればチーム内での立ち位置も変わってきます。筋肉を変えることで自分のポジションを変え未来を切り開いていくことだって可能なのです。そうやってひとつの体験から未来が開けるイメージをたくさん持ちましょう。
細い腕、細い首、薄い胸やお腹、小さいお尻、これらはサッカー選手としてやるべきことをやっていない証なんですよね。上手くなるために使わなきゃいけないスキルや体のパーツを上手く使えていないってことが目に見えるわけですから。サッカーを真面目に突き詰めていくと、テクニックがないから筋力がない、筋力がない選手はある種のテクニックが欠落している、そういうふうに言えると思います。
気づく→やる→体からサインを貰う→改善する
このサイクルを回せるようになると、上達が楽しくなってきます。
「最新のトレーニングをやったぜ。今日もしっかり疲労したぜ。」という自己満足だけの練習ではいつまで経っても上手くなれません。各自が気づきを得て、体からのフィードバックを感じ、それを明日に活かしていこうと知恵を絞ることが上達の肝です。同じ練習をしていても上手くなる人とならない人がいるのは、練習を通して得られる感覚に敏感でいるかどうかが大きいと思います。それは言葉にならなくてもいいのです。なんとなくいい感じだ、あるいはダメっぽいなぁーやり方変えてみるか、そんなアバウトなフィーリングを大切にして日々の練習をよりよいものにしていってもらいたいですね。