footballistaに風間監督の素晴らしいインタビューが載っていました。
誤解だらけの“風間サッカー”。じつはビビリ? 気弱? あがり症?
サッカーを知れば知るほど風間さんの凄さがわかる今日この頃です。
この中で正確性とは速さだからという言及があってこれについて考えたいと思います。
あと昨日のツイートでイニエスタ選手と対戦した選手の感想に「早い」というのがあって、「早いのが上手さにつながっている」という解釈がされていたのでそれについても書いてみます。
サッカーでは正確にやるというのが単純に速さになるわけではありません。サッカーのプレーは工場の生産ラインではないからです。
①正確性→動作に無駄がない→速い
これだと妨害するのは容易いです。またスピードを上げると言っても上限があるので、伸び悩みます。
②正確性→複数の選択肢を持てる→相手を見ながらプレーできる→守備者の行動が監視され先読みされている→守備者は妨害が間に合わない→攻撃者のプレーが速いと感じる
こういう流れで正確性が速さにつながることになります。実際の動きが速くなくとも、プレーして対峙すると速く感じます。
正確にやることは、選択肢を持つことを許容してくれます。
例えばaからパスを受けたbの選手がトラップしてcにパスするとします。この動作を極限まで無駄を削ぎ落として速くすれば上手くなれるかというと、なれません。どうしてでしょうか?
このとき守備者はbのプレーを予測し、前もって対応することで妨害することができます。
ではbが別の選択肢dへのパスあるいはeのスペースへのドリブルが可能であったらどうでしょうか?守備者はすべてを同時に止めることができません。
またトラップでもb1というトラップがあればb2,b3というトラップもあり、それぞれについてc1,d1,e1という分岐した選択肢が可能になります。
守備者は予測する手筋が多すぎて、次になにが起きるかを予測することは困難です。このようなことは守備者に相当の負担を強いることになります。
その結果守備者は間に合わない、追いつかないと感じ、攻撃者を速いと感じます。
ではみんなそのように選択肢を持ってプレーをすればいいじゃないかという話になりますが、実際に行うには正確にボールをコントロールし、正確に自身の姿勢をコントロールしないとなりません。
また正確なタイミングでパスを呼び込み、顔を上げ、正確な方向に視線を送らなくてはなりません。
イニエスタの上手いところはまさにここで、複数の選択肢を可能にする姿勢で常にプレーできます。
その原理は蹴球計画の正対やfootballhackの懐理論で説明されているところです。
あるいは最後まで見て判断しながら蹴るためにボールをしっかり止めるというセオリーは風間さんの言う通りです。これは直前で判断を変えるプレーにつながります。
こういったことを正確にできるためイニエスタは速いと言われるのです。先手を取って動けるので早いとも書きます。
正確なパスは味方に時間をプレゼントするとよく言われますが、選択肢をプレゼントする行為でもあります。また正確なトラップは次にパスを受けようとする人への絶好のサインになります。このように正確性はスペースを生み出すキーファクターです。
正確性はポジショニングの話でも言えて、例えばbがaからパスを受けてcに出すとなるとき、cのポジションが悪ければ選択肢にならないので、bはaに戻すかドリブルするかということになります。しかし、cが良いポジションにいて、さらに別のdが良いポジションにいれば、bは前方に2つの選択肢を得ることができ、直前で判断を変えるプレーが活きてきます。
味方が悪いポジションにいると、いくら眼が良くて、身体操作に優れていても、サッカーで一番大事な「直前で判断を変えるプレー」を発揮する機会が激減します。味方がいいポジションにいれば、そのような機会が増えてサッカーがどんどん上手くなっていきます。
個人的にサッカーを深く理解するきっかけは幾つかあって、1つは中高時代の指導者との出会い。2つ目は蹴球計画、3つ目はゾーンディフェンスの研究、そして4つ目が賢者バスケとの出会いです。
特に賢者バスケとの出会いが風間サッカーをより深く理解するきっかけになりました。