サッカーの上達には相手が必要です。ドリル練習を繰り返しても一定レベルまでは上手くなっても、それ以上の成長はありません。劇的なブレイクスルーを経験するには相手のある練習の中で駆け引きを学ぶしかありません。
駆け引きとは傾向と対策です。こうすればこうなるだろうという、一手一手の応酬を理解すべきです。つまり、すべての駆け引きはひとつのパターンから出発するのです。レベルが上がればパターンが積み上がっていきどんどん複雑になっていきます。複雑な判断を一瞬で行うのが直感です。直感によって駆け引きの中で正しい唯一手を選択できるようになれば、そのレベルではトップを取れるでしょう。
ドリブルはサッカーにおいてシュートの次に重要な技術です。ボールを個人で扱う技術をドリブルとするならば、パスもトラップもドリブルの上に成り立っていると言えます。ここではドリブルを根本的に理解するためのキーワードである懐について、その基本的な考え方を紹介することで解説してみましょう。
まずは下の動画を見てみてください。友達を実験台にして実演しました。
ここでは4つの段階に分けて駆け引きの応酬を解説しています。
1. スピードだけで勝負する
スピードだけで勝負する場合、相手より身体能力が高いことが大前提です。なおかつ2人目のカバーリングが拙ければ、スピードだけで突破口が見いだせるでしょう。しかし、現実には足だけ速くてもすぐに対策されてドリブル突破は難しくなります。ですから、多くの選手が競争力の高いステージに上った時に、壁にぶつかるのです。ここで諦めずに創意工夫をこらした選手だけが次のステージに進めます。ここではそのヒントを提供しましょう。
2. 懐を使う(クスドリ)
以前の動画にも紹介したとおり、スクリーン(スラローム)からの突破にはクスドリが向いています。ボールを隠した瞬間に低い姿勢から爆発的な加速ができるからです。DFとOFの意識のズレを利用した効果的な突破法です。タッチライン際だけじゃなく、ピッチ中央やカットイン時にも使えるので大変便利です。是非マスターしてください。
3. 内側に切れ込む(クライフターン)
クスドリでの縦突破を何度も見せると、相手も対策を練ってきます。その対策は簡単です。DFは縦を切ればいいだけです。そこで、今度は同じ姿勢からカットインを試みましょう。相手の体と入れ違うように内側へ滑り込めば、それほどの鋭さがなくてもするりとかわせます。スピードがある中でやるのは結構難しいですが、マスターすればほぼ無敵です。なぜなら、DFは原理的にクスドリとクライフターンの見合いを止めることは不可能だからです。どちらか一方を止めようと思えば、もう一方を空けてしまう、これを「見合い」といいます。
4. 間を作る
そこでDFは次の手に出ます。懐姿勢を作られたらDFに勝ち目はないわけですから、ここでDFが取るべき手はひとつ、「離れること」です。
OFが軸足を一歩前へ出せば、DFは次の手を止めることは出来ないので、抜かれないためには距離を取るしかありません。下がって縦も中もカバーできるポジションを取れば、当面の心配からは免れます。
つまり、OFは軸足の踏み込みと懐姿勢の形成によって、間を作ることに成功します。「間」とはDFがボールホルダーに飛び込めない状態を言い、「間合い」とも呼ばれます。DFがボールホルダーの近くにいるのに飛び込めないのは、OFが懐を使って見合いを仕掛け、食いつけば絶対に抜ける姿勢でボールを持っているからです。
結果的にDFはボールホルダーに近づけませんが、ゴールへは近づけさせません。OFは間を利用して擬似的にフリーな状態からパスやシュートを狙います。このパスやシュートの成否は周囲の選手たちの関係性によって決まります。ここから先は1対1を超えた範囲なので別項にまとめます。
x. スクランブルで抜く
最後に、これは理論ではなくどちらかというとオカルトに近いですが、ドリブルのうまい人はスクランブルで抜いて行けます。相手の足にひっかかったルーズボールを突いて前へ運んだり、相手ともつれて倒れそうになりながら突破したり、腑に落ちない抜き方で突破するシーンをよく目にします。これも懐が関係ある、、、、、と言いたいところですが、納得行く説明ができないので、次の課題としましょう。
方法論と実力は比例しない
最終的に非常に厳しい結論ですが、ドリブルの成否は才能によって決まります。ドリブラーになれるかどうかは、懐を使いこなせることより、スポーツビジョンとステップワークの優劣で決まります。
懐を極めていくと行き着くのは、相手の体重移動を瞬時に見抜くスポーツビジョンと、相手より素早くステップを踏み変える足捌きです。優れたドリブラーが「見えている世界が違う」と思わせるようなパフォーマンスを発揮するのも、スローリプレイじゃないとどうなったかわからないボールタッチを見せるのもすべてこの2つの才能に拠るところが大きいのです。
だからといって懐という考え方が無駄なのではなく、懐は個人個人が上達するためステップになりうるのです。あなたが明日いきなりメッシになるのは不可能です。しかし、昨日のあなたより上達することは十分に可能です。サッカーは相対的なスポーツですから、相手のレベルが高ければいくら正しい動作を行ってもミスをすることはあります。でも、もしその時に懐を知っていたとしたら、もしかしたらもっとよい結果を得られたかもしれない、そう信じることから上達は始まるのです。
ただのストップゴーだと思って使ってましたが凄く納得しました。クライフの他に踏み込んだ後すぐ縦に体でフェイクを入れて中に切り返してましたが、クルクルターンに関しては理解できず、遠い間合いから踏み込むと抜けるときもありますが、同じ間合いからクスドリをキャンセルできません。イニエスタが実践してるのを何度も見ましたが理解出来ないため解説して頂けましたでしょうか?
最近シザースと懐を織り混ぜて使えるんじゃないかと思ってるのですが、どうなんでしょうか?
懐で相手をギリギリまで追い詰めてシザースを使うと簡単に逆を取れるようになったんですが、これでは上のレベルでは通用しないのでしょうか?
自分の懐の使い方は間違ってるのでしょうか?
高1で4141の左サイドハーフ(右利き)やってるのですが、サイドバックが高い位置で持ってる時に、中でもらいたいのですが、トップ下と被ってしまいます。どうすればいいでしょうか?
またサイドハーフで懐が上手い選手や参考になる選手を教えてください。
krankさん
くるくるターンの解説や他のパターンの解説は今後やっていきます。多分年明けですが笑。お手本としてはhttps://www.youtube.com/watch?v=NoaYL4fBMagです。すません。
ニコさん
シザーズは僕は昔は使えないと偏見を持っていましたが、懐を理解した今、大変使える、しかもドリブルの自由度が格段にアップする技として注目しています。シザーズは左右の懐を入れ替えるとき重宝します。例えば右アウトでまたいだら次はボールは左の懐に置きますよね。この時左足のイン・アウトで左右に抜ければドリブルは成功します。また、縦への跨ぎ、横への跨ぎで動きも変わってきます。解説は年明けにやります。ごめんなさい。縦のお手本はモドリッチと旧ロナウド(フェノーメノの方)です。横はロナウジーニョです。この話はフィーゴのアドリブルにつながってきます。
ハントさん
4-1-4-1でトップ下が居るとはどういう状況ですか?通常4-1-4-1では中盤の底をアンカーと言い、真ん中の2人をインサイドハーフ、外の選手をサイドハーフもしくはウィングと言います。
インサイドハーフと被るという話でしたら、バイタルエリアを狙ってください。中の高い位置ということです。また、ニアゾーンに飛び出してもいいです。左サイドハーフ右利きはいい選手いっぱいいますよ。アザール、イニエスタ、リベリー、ゲッツェ、誰でもいいッて感じです笑。
ポジショニングか被るという問題は、いろいろ解法があって、ひとつは正対と表裏のインサイドキックを理解してパスラインを確保しようということです。被ってもパスラインをひとつ増やす位置にいれば邪魔にならないのです。もうひとつはスキップパスを理解して被ることをあえて利用しようということです。中間者を囮にすることでゾーンの隙間を狙います。最後にフォーメーションを理解することです。守備の法則には穴があります。それを突くにはシステムの理解が必要です。
①正対は蹴球計画 http://c60.blog.shinobi.jp/
②スキップパスは旧footballhack http://silkyskills4beautifulfootball.blogspot.jp/
③フォーメーションは4-4-2 ゾーンディフェンス http://footballhack.jp/tactics/zone-defence-youth/
とりあえずはこれで学んでください。
いつも参考にさせて頂いています。
初めは懐の大切さが分かりませんでしたが、今はとても大事で、かつ上を目指すには必要な技術だと分かりました。ありがとうございます。
さて、ドリブルも大事ですがその前にボールを受ける技術(トラップ)も大事だと考えています。今悩んでいるのは、逆サイドから蹴られた浮き球のトラップで、どうしても上手く収まらなくて悩んでいます。この時のトラップのコツってありますか?
蹴球計画「コントロール」を参考にしてください
クスドリをぜひ参考にしたいのですが、守備が好きなもので、守備側目線で見てしまいます。守備すら下手なのに。世界のディフェンダーは、どんなふうにクスドリを止めることがあるんですか。よかったら教えてください。
[youtube http://www.youtube.com/watch?v=Ld_7xgt75MA=14s&w=500&h=281%5D
この動画は何度見てもヤバイので何十回でも見てください。特にベンゼマとの攻防はレベル高すぎて引きます。
スクランブルの件ですが、懐が浅い状態だとボールにタッチした後すぐ足が地面に着地するので相手に取られたら為す術がありませんが、懐から出せば足が地面から離れるときにボールに触れるので、相手にボールを取られた時に足が着地していなければ、相手はボールを取るために足を出し不安定なのに対し、
自分は姿勢を崩していないのでそのまま利き足でゴリゴリと行けるかもしれません、ということを思いついたのですがどうですかね?
ありえます。観察を続けたいと思います。
前のブログにあったドリブル方法論には懐の内容がなかったのですがどっちも実践した方がいいのでしょうか?
旧ブログのは懐に気づいていないで書いた記事です。旧ブログは初心者向け、懐ドリブルは中級者向けと解釈してください。
ありがとうございます あともうひとつ質問なんですが懐以外に蹴球計画のドリブル中の浮きってのがあるんですけど、どちらが重要何ですか? それとも使い分ける必要があるんですか?
正対を意識して懐を使用すると自然と浮きます。軸足踏み込む→アウトで切り返そうとする→やっぱ切り返さない→浮き→懐にボールを納める という順序です。全部つながっています。
ドリブルが好きで、ドリブルを練習しているのですが、コーン無しのジグザグって意味ありますか?中1です。
インアウトと右足と左足を50回ずつ、頭の位置と細かくやることを意識しています。
あとトップスピードで右足のジグザグドリブル、2回で切り返すのと3回で切り返すのをそれぞれ10回ずつやっています。
それとあとは懐から縦とアウトとクライフとくるくるターンをそれぞれ30回ずつやっています。
これらの練習ってどうですか?悪いですか?
そういったドリル系の練習を繰り返すのは中1で終わりにしましょう。進級したら対人や実戦形式の中で経験を積んでください。そして課題を取り出して個人練をしてください。これからは自分の練習は自分で考えることも大事です。それには分析力も必要になります。分析のポイントとしては①いかに速く動くか②いかにして複数の選択肢を持つか、の2点を意識するといいでしょう。
ありがとうございます。二年からは高度な練習に取り組む、逆に言えば1年の間でこのドリル練習をマスターしなければならないと言うことですね。
ところで、懐は逆足も練習した方が良いのでしょうか?
いまのドリル練習では右の懐しか練習していません。
あと、試合に出るための条件と言うか、これができる選手が試合に出られる、どう言うものってありますか?
懐を意識してとられないようになってからベンチ外は減りましたが試合に出れることがなかなかありません。
ポジションは4ー4ー2の左ハーフを希望しています。
僕のポジションには左利きのパサータイプの選手と右利きのガッツむき出しのプレーをする選手がいます。
教えてください。
天さん
そうです。あと半年、頑張ってください。逆足もあると便利です。
スタメンの条件ですが、やはり得点です。それがだめならアシスト。結果を残しつつ、球際での勝率を上げていくことです。ポイントになる選手を目指してください。チームのためになるプレーが出来ているか常に客観的な視点で自分を評価してください。自分にボールを預けたいと味方が思っているか、自分がボールを持ったら確実に前進できるか、ゴール前では決定的なシュートを打てるか。あとは自分より上手い味方から技を盗むしかありません。
今この努力をしているのはあなただけなのですから、1年後には確実にレギュラーを奪えると思います。頑張ってください。
近々懐ドリブル練習の動画をアップするので参考にしてください。
素人さんが投稿してくれたメッシのコーンドリブルの動画。
その中で見せるメッシの、特にインサイドターンの技術。
あのタイミングと重心移動でターンをこなせる無意識に落とし込まれた身体の使い方がすでに非凡さを表していると思います。
何気なくやっていますがすごい技術です。ドリブル苦手な人は動画と同じことをしてみて自分とその違いに気づけると飛躍的に上達します。
素人ではない素人さんありがとうございました。
スキップからの浮きで(軸足の二度つき)下肢を捻ってインサイドでの2ステップはそれほど珍しい動作ではないですが。それよりアウトサイドでのボールのこすり落とし方が非凡ですね。速くドリブルするのにはタッチ数を増やすほうがベターというのがわかる動画ですね。
並の選手が同じ動作をするとこうはならない、似て非なるものになるという事を言いたかったのですが下肢を捻ってなどという表現が出る時点で看えておられないようですので残念です。
あえて苦言を呈しますとネイマールのシュート動作解析にも言えることですが、重心移動と体重移動を混同されているようなのでそれでは本質は見えてこないかと。
形式の中に含まれる要素は意外にも多いのです。
しかし学ぶ事と似ておりますが自身に必然が生ずれば自ずと心技体は変化するものかと。
問題と答え、両方与えてもらわなければ前に進めない論理性至上主義ではいつになったら最高峰に近づくのでしょうか。
技術も必然が導き出す。
素人はその技術(答え)だけを見てそれが備わった必然(問題)をみようとはしない。そのままではいつになっても同じです。
そして関係のない事が意外とつながっていたりする。人生面白い!
442ゾーンディフェンス読ませていただきました
お勧めされてた岡田ジャパンの戦術ミスも一緒に読み非常に勉強になりました!
もし他にお勧めできる書籍あれば教えてもらいたいです
・蹴球計画 http://c60.blog.shinobi.jp/
これを全部読めばだいたいのことはわかるようになります。日本にある全てのメディアを通じて、最高の情報量と密度と正しさ。
・ドゥンガ 勝者の条件
メンタル本です。論理的に突き詰めると勝利のためにあるべき私生活の形や普段の心構えが見えてきます。ドゥンガはそれを丁寧に熱く解説してくれてます。
・FCバルセロナの人材獲得術と育成メソッドのすべて チャビのクローンを生み出すことは可能なのか
パスサッカーで勝つにはなにが必要か教えてくれます。
・最速上達サッカー オフ・ザ・ボール −村松尚登
意外といいです。FWの動きがだいぶ不足している部分を除けば、小中学生向けの現状でベストな教科書です。
・風間八宏 FOOTBALL CLINIC DVD1~4
15歳以上向けでレベルがかなり高いですが、使えます。これもっと広がらないかなと思います。
最近はあまり読んでないので、おすすめがあれば教えて下さい。
右利き右サイドで懐を使ったり、クライフで中にはいったり本当にシンプルな駆け引きで突破できます!さすがに、上手い人になってくると上手く間合いを取られるのですが、それで二歩三歩の間合いがうまれるのでパスやシュートの選択肢が生まれますので大変重宝してます
ところで、右サイド右利きのときだけじゃないとおもうのですが、懐ドリブルで縦に行く時に懐姿勢で相手からボールが見えなくなったときか単に加速したいときどっちで使えばいいですか?どっちのほうが有効ですか?
スラロームからの懐は困った時に使うようにして、自らの意図でその形に持っていくのは避けたほうがいいです。
基本は正対からの浮きで左右に加速です。それが読まれて相手が寄せてきた時はじめて、スラロームの懐を使うといいでしょう。つまり、正対という解法の他に懐を用意することで二段構えでドリブルを仕掛けるということです。
質問の意図を僕なりに判断して答えると、単に加速するのがベターです。相手が近くにいない場合、ルックアップして良いパスの選択肢を持つことが大事だからです。
騙したい相手が近くにいれば、接触してなくてもクスドリが効きます。試してみてください。
はじめまして。懐についてお聞きしたいのですがサイドだとインサイドを使った懐など使えるんですがセンターサークルなどの真ん中の位置で相手と正対した時に別に抜く必要は無いのですがバイタルエリアでは抜く選択肢もあると思います。そのバイタルエリア付近の真ん中らへんで相手と正対している状態から抜く方法というか参考になる例を教えていただきたいです。説明が下手くそですいません。ゴールから正面でのプレーでの懐を使った例が欲しいのでお聞きしました。
ついに球際についての専門書がボカジュニアーズから日本向けに出版されましたね
よく球際の駆け引きについてまとまっています ぜひ読んでみてください
初めまして。以前のブログでメッシのドリブルを勉強して、理論的に子供のトレーニングを行ってみたのですが、マシューズ(に近いボディフェイントも含め)~アウトインのダブルタッチはこの形で合っているのでしょうか。(0.26~、1.03~、1.47~)
https://youtu.be/hbX4DDQTWX4
かなり上手いですね。懐使えてますし。スクランブルでも行ける。体の使い方もかなり上手いです。形にこだわらせすぎずに、相手を観ることを意識してプレーさせるのがいいです。今のところ、高校までレギュラー確定レベルではあります。