現在指導者として活躍されている方や指導者を目指す方にぜひともオススメするのがこの本です。この本は人間関係の本といわれ、長年ベストセラーとして20代のビジネスマンに最もよく読まれている本の一つです。内容を簡単に言うと、伝え方次第であなたの成功が決まるよと言う話です。
タイトルを読むと、組織の上に立つリーダー論のように思えます。しかし、中身は一対一の対人関係で心がけるべき話し方や考え方であり、だからこそ、広範な人間関係で応用できる考え方です。
もちろん、サッカーでも利用できます。指導するとき、チームメイト同士、指導者同士のコミュニケーションや、選手から監督に話すときなどです。
この本がくれた大きな気付きは、技術や戦術をいかに論理立ててわかりやすく説明したところで、選手はそのとおりに動かない、という現実を感情の面からわかりやすく理解できたことです。
人には自尊心というものがあります。自尊心とは簡単に言うと自分が一番カッコいいと思う気持ちです。サッカー選手は自尊心がひときわ強いと言えます。そうでなければレギュラーを掴むことは難しいでしょう。
この自尊心を傷つけずに上手くくすぐって、相手を自分の思うように動いてもらうことが大事なのです。
新しい技術や戦術を教えるというとき、必ずその選手の今までのやり方を否定するところから入ってしまいます。すると、その選手は自分が否定されたように感じ、技術や戦術を受入れてくれません。
これはゲームフリーズでの指導にも同じことが言えます。
特に上手な子や高いレベルでプレーしてきた選手にはこの傾向は顕著です。
まずは、その選手の長所を真心を持って褒めます。このときできれば、他の人が気づかないような隠れた長所を指摘すると効果的です。本人が密かに自信を持っている部分を褒めると自尊心を満たすことが出来ます。そして、信頼関係を築いていきます。
信頼関係が築けたあとなら、選手は指導者の言葉を受け入れてくれるでしょう。
この本を読めばモウリーニョやクロップがいかにして選手の心を掴んでいるのかを、なんとなく理解できるようになります。
モウリーニョはあえて選手の自尊心を傷つけることもするようです。(参照 メスト・エジル自伝)あえて過激なパフォーマンスをして選手の反逆心を掻き立てるのは、高度なコミュニケーション術のように思えます。しかし、一つ言えるのはモウリーニョは選手の自尊心を確実に意識して行動していると言う事です。
日本でコミュニケーションスキルが大事だというのはここ15年くらいで言われ始めたことだと思います。この本が刊行されたのは1937年、太平洋戦争が始まるより前です。日本が敵対国との緊張でビリビリしていた中、アメリカは余裕で知見を蓄積していたわけで、その差は比べるまでもありません。
英語圏のイギリスからヨーロッパへこの書がすぐに翻訳され、またたく間に「一読の価値あり」の評判を得ていったことは想像に難くありません。
憶測の範囲ですが、この書がヨーロッパのサッカー指導界に与えた影響は少なくないと思います。
それほどオススメの本なので是非ともお読みください。僕はAmazonAudibleで聞きました。移動中に気楽に聞けるのでそちらもオススメです。