ラウール・ゴンザレスといえば、スペインの至宝、レアル・マドリーの永遠の背番号7です。彼はいわゆる”ヘタウマ系”の選手です。ヘタウマだと他にはフェルナンド・トーレスやガットゥーゾやプジョルがいます。
”ヘタウマ”とは音楽用語で「歌唱力は低いのに聞かせるボーカリスト」を形容する言葉としてよく使われます。古くは松任谷由実。RCサクセションの忌野清志郎はザ・ヘタウマって感じですね。僕の中の最強のヘタウマは山本精一です。
まぁ音楽の話はいいとして(羅針盤を理解できるメンタリティはサッカー選手に不要なので)、スカパー解説でお馴染みの幸谷秀巳さんはラウールのことをさんざん下手呼ばわりしていましたね。実際トヨタカップで来日した際、やべっち寿司に出演し、ワッキーのリフティング技にラウールとモリエンテスは感嘆しきりで「僕には出来ない」と真顔で答えていたのが印象的です。
日本人が言う「上手い」と外国人が言う「上手い」はやや異なるようです。
日本人が上手いと言う時、それは独りでボールを自在に操れる能力の高さを示すようです。
外国人が上手いと言う時、それはボールにプレーすることで相手の心を操る能力の高さを示すようです。
後者を駆け引きの上手さといいます。駆け引きの一つに懐があります。ラウールはボール扱いが(他のプロと比較して)ぎこちなく見えましたが、駆け引きについては抜群に上手かったのです。そのラウールの得意技がこれでした。↓
向かってくるボールに対して軸足を踏み込んで、体の前をボールを通過させて相手をいなしてから次のプレーに移るトラップです。
当時はこのプレーをすると必ず「ラウールみたいだね」って言われました。
指導している動画を見つけたので載せておきます。
この指導、いろいろ難癖つけたいポイントがあります。
- パスの出し手がDFをピン止め出来てない
- オーバーする時はパススピードを遅くしないといけない
- トラップ後の選択肢を2つ見せないといけない
などなど。全体がわかるようになれば、素早く問題解決に導くことが出来ます。
そこで改めてラウールのトラップを解説しますと4:12からです
この子が上手かったです。指導者より確実に上手くなりますね、この子は。
左の黄色い矢印からボールが来ます。それに対して寄る動きをします。
寄るということはオレンジの矢印で示したプレーをDFに予測させるということです。寄って先にボールを触ってDFの左側を抜いていこうとするプレーです。
DFが対応するには、実際に身体がある位置より左側をケアしないといけません。だからDFはOFの左側へ回り込もうとします。そこでOFはきゅっと動きを止め、ボールを引き込みます。
DFはOFの動きに惑わされて手前側に釣られてしまいました。それと入れ替わるようにOFがトラップする位置をズラして前へ抜け出ます。
上手くやると懐の姿勢である、脚と地面で作る三角形が随所に現れます。
これがラウール・トラップの全容です。向かってくるボールに対して一旦は寄って、脚を引いてボールを引き込んでから相手をいなします。タイミングだけでかわせるシンプルな技です。
懐が深いプレーの象徴のようなトラップです。というか、僕はあるときまで、このプレー以外で具体的に懐が深いプレーを指し示すことが出来ませんでした。
懐が深い=ラウールのトラップ
という理解で十何年間のサッカー人生を来てしまいました。これはこれで正しいんですが、一面的だったのです。”引き込む懐”があれば、その逆の”差し出す懐”もあります。押し引きを理解せずに懐の全容を理解した気になっていたので、消化不良を起こしていたようです。
でもひとまずは懐=ラウールでいいです。ここを出発点として懐の奥深い世界を探求してみましょう。
ってか昔こんな記事書いてたのに忘れてました→ラウールの懐(かしい)トラップ
次→懐の定義
WOWOWで1999年のクラシコを見ました。ラウールもフィーゴもハンパない。
懐について更に掘り下げてください。楽しみにしています。
すごい!!!!これよく鳥かごでやってました。めちゃくちゃ楽にパス出せます