tenorion by yamaha
最近、僕の中で分解し再構築してきた技術のひとつひとつを連続して発揮できるようになってきました。それを通じて感じたのは、点と点を結んで線にすることは自分でやらないといけないということです。
このブログで発信しているのは「点」です。点とはそれだけでは何も役に立たないただのウンチクです。しかし、複数の点を繋げて線にできれば、状況を改善することができます。
ひとつひとつの技術論や戦術論を理解することはとても重要な事ですが、それがプレーの上達に直結し、即効果が現れるかというとそうではありません。技術の原理や戦術の原則はある状況に発生する問題を解決することに役立ちますが、ピッチ上に落ちている問題は一つではありません。常に同時に複数の問題を解決しながらプレーを進めなければなりません。このときに大事なのが「点と点を結んで線にする」感覚です。
辿るべき点を上手に選択して、その間に線を引く行為は、その状況の中にいるあなた自身にしか出来ません。あなたが感知した手がかりをもとに、状況を打開するために必要な線を引いていきます。引ける線の可能性は何十パターンにも及ぶでしょう。その中で、自分の感性や身体の感覚に合ったものを選んでゆくのです。この繰り返しによって自分なりのスタイルが出来上がっていきます。
そもそも点のとり方が間違っているとどこへもたどり着かないので、このブログではまずは正しい点の考え方と点の置き方を提案しています。例えば聖和や岡部氏やネイマールの真似をいくら続けても、サッカーを正しく理解することにはつながらないので、まずはサッカーのエッセンスになる部分を抽出していきます。
そしてそれらを連続して発揮できるようになればプレーは上達するのです。しかし実際には、いろんな技があってそれらひとつひとつの組み合わせを考えると膨大な数になってしまいます。全てを紹介することはできないので、そこから先は読者のみなさん自身の経験で進んでいってほしいのです。
サッカーでは全く同じ場面はありません。相手との距離感や、相手のリーチや反応が違えば、技を発揮するタイミングや強さも異なります。しかし一方で、サッカーでは似たような場面はよく起こります。同じような場面を解決する上で、適切な技を用い、そのときそのときで適切な強さやタイミングや角度で技を発揮できるように、自分の身体を調整できるようにならなくてはなりません。言葉で説明するとややこしいですが、これが「自分の間合いを持つ」「自分のスタイルを持つ」ということになるかと思います。そして次第に無意識に身体が動くようになります。
リケルメ解説シリーズで行っているのはそういうことです。リケルメは技と技の接続によどみがなく、コンマ何秒かで複数の問題を解決しながらプレーしています。これは頭で考えてできるようなものではなく、文字通り身体が勝手に動くようにプレーしているといえます。
どうすればそのようになれるのか。たくさんチャレンジし、数多くの失敗と小さな成功体験を積んで行くしかありません。つまり、身体を動かして、感覚のフィードバックを得ながら上達するしかないのです。成長スピードの差はセンスと感覚器の精度の違いだということはこれで理解いただけるでしょうか?
無意識に複数の技を繰り出して状況を打開できたときにはじめて「点と点が結ばれて線になった」感覚を味わえるでしょう。
そしてこの話には続きがあります。
線を引くのは無意識で行いますが、線を集めて面を描くのは意識的に行います。
今のプレーの終わりからなにが始まる(生み出せる)のか、今のプレーはどこからつながっていてどこへ向かっていくのか、より大きい視点でプレーをイメージできると、サッカーは面白くなってきます。
ドリブルで2人抜いたとしましょう。それで満足する選手は線が引けただけで喜ぶお子ちゃまだと言えます。ドリブルという線で相手の注意を惹きつけたら角度を変えるパスでフリーの味方を活かす、あるいはGKと目線で駆け引きした上で体重の乗ったミドルシュートを放つ、そこまでイメージできて初めて面を描けたと言えます。面を描くことを目的としたプレーには無責任さがなくなり、チームを第一に考えることを促します。また、相手を動かしてゴールを狙う駆け引きの面白さがわかるようになります。
僕自身が面を描くレベルまで達していないので、後半はやや抽象的な話になってしまいました。しかし、点と点を結べば線になり、それがチームを助けるんだという感覚は、今までサッカーをやってきてこれほど強く感じたことはないなので、ここでシェアさせてもらいました。
イニエスタやリケルメはゴールへの最短を通らずに、敢えて遠回りしているように見えるプレーをときおりします。それは彼らなりに状況を分析した上で、ゴールを目指す駆け引きなのです。自分の持つテクニックで線を紡いでいき、大きな面を描くイメージを持ち、プレーを進めていきます。彼らのプレーが観客の予測を裏切ったときには、きっとなにかの仕掛けがあります。じっくり見直してよく考えてみてください。
football_hackさんのブログをいつも読ませてもらっている者です。下手くそでもっと上手くなりたいと思っているときに、このブログを読み始めました。
そして読んでいくうちにわかったことが「自分で発見することの大切さ」です。いくらfootball_hackさんに教えてもらったところで、自分で感覚を掴まなければ意味がないし、自分でプレーしながら身につけた方が身体が勝手に動いてくれる感覚がありました。例えば、正対ドリブルも最初は近づきすぎてボールを取られていました。失敗していくうちに「このくらいボールをズラそう」「ここはスラロームしよう」というのがわかってきたという感じです。相手によって間合いの取り方も変えないといけませんし、結局のところプレーして失敗を積み重ねるしか上手くなる方法はないのです。勿論、このブログを批判する気はありませんし、私も上手くなるヒントをたくさんもらいました。伸び悩んでいる選手がこのブログを読むことはとても為になると思います。大切なことは書いてあることを鵜呑みにするのではなく、考えてプレーすることです。きっとネイマールも試行錯誤をしながらあれほどの選手になったのだと思います。
今回の「点と点を線でつなぐ」という投稿を読んでふとそんなことを考えました。技術系のブログは本当に稀少なのでこれからも頑張ってください。