サッカーで行う動作っていうのは、脳の中のほとんど言語と関係ない領域で制御されていると考えてます。
ですので、動作の実行中に指示を与える事は、実行しようとする意思が備え持つ実行プログラムを乱すので、結果として実行がうまくいかないことになります。
コンピューターに例えるとプログラムの実行中にプログラムを書き換えるコマンドを入力しようとするようなもので、当然うまくいくはずはありません。ですから何かやり方を教えようとするときは、動作の実行中ではなく、動作を始める前か終わった後に一呼吸置いて選手に動作をイメージさせながら説明することが大事です
動作の実行中に説明を与えると動作を実行しようとする意思を伴ったプログラムを掻き乱してしまいスムーズな流れを断ち切ってしまいます。ある程度選手の意思を尊重して、回数を重ねてやらせてみるということが大事です。
これは、選手のタイプにもよりますが、慎重派で何事も初めにやり方を確認することを求める選手には、初めから、ある程度の情報量を与えても問題ありません。反対にまずやってみようと言う子に説明を最初にしてしまうということをすると、その子の持っている本来の勢いを削いでしまう形になり、個性を伸ばすことにはつながりません。
まず、自分がやってみせて、上手にできる形を目で見てもらい、真似してもらうところから始めます。そして必要ならば少しの説明を加えて指導し、実際にやってもらいます。ですから、まずは教える側がきちんとできるということが何よりも大事なのです。
近所のお兄ちゃんやおじいちゃんがめちゃくちゃサッカーがうまいというのがサッカー強豪国の実態なのだと思います。
それでもサッカーのプレー中に指示を与えることで改善が見られるということはあり得ます。それはある程度段階を踏んだ上で、例えば小学校高学年とか中学生以降でしたら、プレー中の指示は効果があるでしょう。
しかし、気をつけなければならないのは、プレー中にやり方を指示する事は、ある程度選手の自己プログラムを見出してしまうと言う点です。ですから、プレイのテンションを伝えるとか、認識に働きかけるといった声かけは良いと思います。
最終的には、選手自身が自分で自身の動作プログラムを修正していける力をつけさせることがコーチングの目標です。そうでないと選手は、自分に指示を与えてくれるコーチがいなくなった途端、成長をしなくなってしまいますから。
サッカーの上達には、自分自身がプレイ中に得た感覚や直感をもとに、自分の動作プログラムを変えていく力が必要不可欠なので、コーチやその周りの人たちは、それを理解した上での声掛けが大事になってきます。
どんな選手でも続けていれば必ず上手くなります。「いずれ必ずできるようになる」と信じて忍耐強く大きな気持ちで選手に関わることが大事だと考えています。