キックの本質とコントロールの本質の記事ではボールを扱う足に荷重するという話に触れました。これを体感するためにリフティングをしてみましょうという本日の記事です。
そもそもリフティングってサッカーの練習として意味があるの?という話をまずはします。
リフティングの回数は大事なの?
結論から言うと100回以上できるなら、1000回でも10000回でも技術的に求められることは同じです。回数を目指す上で大事なのは体力と集中力あとは環境でしょう。靴紐を硬く結んどくとか、平らな広い場所で誰にも邪魔されないところを選ぶとか、水分をよく補給しておき、汗を拭えるリストバンドをしておくとか、準備の方が重要です。
10000回リフティングができることは尊敬に値しますが、繰り返し述べるように100回続けてリフティングする技術があれば、それ以上は試合で使える技術力としては十分だと思います。
試合で活かせるという意味では回数より、体の様々な部位を使ったり、移動しながら行うほうが練習になります。また、柿谷選手が言うように狙った高さで突き続けたり、柴崎選手の言うように首振りを交えたり、ボールの回転を制御する練習のほうが身になります。
小6で3000回できるようになった筆者の個人的見解として受け流してください。
次にリフティングの技についても触れておきます。
リフティングの技は試合で使えるの?
You Tubeなどでリフティングの技を検索すればあらゆる華麗な技を見ることができます。どれもすごくてとても上手く見えますね。
試合で同じような技を連発して活躍している選手を見たことがあるかというと、そうではありません。何試合かに一回は華麗な技で相手を抜き去るシーンを目撃します。そのシーンを何回も何回も動画で目にするので、サッカーの試合で華麗な技を練習したほうがいいような気になってきますね。
しかし、実際に試合をすれば、華麗な技をやっている暇なんてありませんね。むしろ相手と取っ組み合いに近い球際の競り合いをするほうがよっぽど多いです。
結論から言うと、リフティングの技を練習することは、試合で活躍するためには全く必要ありません。
小5でアラウンドザワールド(空中のボールの周りを足が1回転する技)や首裏乗せ、地面に置いた足の上でバウンドさせるやつなど、フリースタイルの基本技をマスターした筆者が言うので間違いありません。
そういう技をアップのとき相手に見せつけるようにやって、「あいつは上手いぞ、要注意だ」と思わせて、いざ試合で全然目立たないという、切ない経験をした方ならわかると思います。
プロのリフティング
プロ選手が入団会見や練習で見せる、何気ないインステップのリフティング、それを見て僕はいつも不思議でした。なぜその姿勢で無回転のリフティングができるのか?自分のリフティングと根本的になにかが違う!
このファンダイクのリフティングを見てください。この力感のなさは不思議ではないですか?微妙に回転はかかっていますが。
ファン・ダイク選手って本当に美しい立ち姿をしているなと改めて感じる動画。
特に背骨のシルエットが本当に美しい。
ボールを触っていても身体がグニャグニャしたりする感じも全くないですし、整っているのだろうな…これに近づくためにどうするか…pic.twitter.com/XeQPl0cVCe
— 奥村正樹(スポーツトレーナー/physio) (@Masa19901) January 26, 2020
一方一般の人のリフティングはこうなります。
腰から体が折れてくの字になり頭がタッチごとに下がってしまいます。このやり方で無回転にしようとすると足首を伸ばして足首付近で蹴る必要があります。
僕も約30年間このやりかたでした。つい最近プロのやり方に気づくまでは。
この違いは軸足荷重(一般の人)か蹴り足荷重(プロ)の差にあります。
一般の人のように軸足荷重だと、軸足で体を支えるので、蹴り足を前に差し出すとき、自ずとお尻を後ろに落としてバランスを取ろうとします。結果、頭が下がり体がくの字になります。
またキックの本質でお伝えしたように足に力が伝わりにくく、ボールを蹴り上げるために大きな力が必要になります。
一方、蹴り足荷重では、歩くときのように背筋が伸び、軽い力でボールを蹴り上げることができます。
試しにこんな練習をしてみてください。
1 高いリフティング
ボールを頭を超える高さまで蹴り上げて、連続でつき続けます。ボールにはなるべく回転がかからないようにし、蹴る際は足をなるべく上げないように意識します。低いリフティングをするときの足の位置で高く突き上げます。
蹴り足荷重なら容易に可能ですが、軸足荷重だと蹴り足を高く挙げない限り難しく感じるはずです。
また無回転のリフティングをするとき、軸足荷重なら足首付近で接触しなければなりませんが、蹴り足荷重なら足の指の付け根付近でも可能です。
2 高低中リフティング
ボールを高く蹴り上げ(3メートルくらい)、落ちてきたボールをインステップでコントロールし膝の高さまで浮かします。次に胸の高さまで突いて、3回目でまた高く蹴り上げます。これを連続で。
勢いのある浮いたボールをコントロールする感覚を養えます。コントロール時も蹴り足荷重すると、そこまで神経を使わずとも、思い通りの位置に止められることがわかるはずです。
軸足荷重だと高く蹴り上げるとき足首を固定して強い力が必要になりますが、蹴り足荷重だと軽い力でボールを蹴り上げることができます。これによりボールの芯を捉えやすくなり、体のバランスも崩れません。そして思い通りのボールを蹴れるのでボールから目を離す余裕が生まれ、蹴った直後から首振りができます。
また、軸足荷重だとボールの勢いを吸収する際にボールの芯を捉えづらく、ボールとの衝突に対抗するために足に出力する力の大きさを制御するのが難しいので、コントロールが難しくなります。蹴り足荷重だとボールに同調する感じで脱力してボールを迎えれば簡単に止まるので安心してリフティングを続けられます。
このリフティングを試したあとにベルカンプのトラップ集を見ると、わかることが増えると思います。
このリフティングに気づいてからリフティングが小2の頃くらい楽しくなりました。夢中で遊べるので試してみてください。