久しぶりですがリケルメ解説続きをやります。
今回はこのプレー。どん!!
バイタルで受けてからワン・ツーしてゴールを決めるシーンです。ボカ時代のプレーですね。では、静止画で説明していきます。
白矢印からパスを受けると、赤矢印から敵が来ます。
すかさず青丸の味方がフリーランを決めます。
白丸内でリケルメは敵と正対状態にいます。赤丸のDFがフリーランをする味方を追っていきます。
このとき、リケルメとフリーランをする味方とトップの味方の3人が一直線に並びます。このような位置関係のとき、スペースを効果的に使うプレーが生まれやすくなります。
トップの選手は外に流れようとしていましたが、味方がフリーランをするのを見てその場に留まる選択をします。
リケルメはボールを足元に置いて歩いてバランスを整えながら、間合いを調整します。両足を同時に着くステップを入れることで、DFのどんなアクションにも対応できる体勢を作ります。
3人が一直線に並ぶ位置関係から中間者が抜ける動きは、DFを欺くのに効果的です。スペーシングにおいて学ぶべきパターンのうちのひとつで「スキップパス」の一種になります。中間者のマーカーはフリーランに付いていくしか無いのでトップへのパスコースが開けます。この瞬間、中間者のマーカーはまだトップへのパスコース上にいますが、リケルメは確実にパスが通ると確信してキックモーションを開始します。
膝抜きトーキックで初動を最小限に抑えて素早くパスを出します。フットサルでよく使われる技術です。小さく身体を浮かしながら踏み込まずに短いパスを入れるときに使います。
飛び込んでくる対面のDFを間一髪でかわしながら、パスアンドゴーを決めます。中間者のマーカーはまだトップの目の前にいますが、このパスを読み切れていません。ぼーっと自分のマークの選手を追うのに精一杯です。
ボールは白丸のところにあります。
トップとワン・ツーしてシュート。リケルメは対面のDFより速く動き出せています。それはDFがリケルメの足元に飛び込んだため、ワン・ツー対応のバックランに遅れが発生しているからです。
インサイドでの美しいシュート。
このプレーのポイントは2つあって、まずはスペーシング理解力です。リケルメはスキップパスのうち、「中間者抜け」のパターンを使ってスペース創造イメージを味方と共有しました。そのことによって、まだ相手のDFがパスコース上にいるタイミングでパスを放つ事ができ、2秒後に生まれるスペースを予測したプレーを可能にしました。タイミングを逃さずパスを出すことで、守備組織の隙間に消えては生まれる、攻略すべきスペースを有効活用することが出来ました。
次に大事だったのが、パスコースを読ませないキック技術です。膝抜きトーキックはパスを出すタイミングを悟らせない技術です。それに加え、この動画ではわかりかねますが視線のフェイクも入れているはずです。スペーシングを理解したパス技術の発達には視線の置き方、盗み方が大事になってきます。見てないふり(ルックダウン)して見ておくとか、見ている方向とは別の方向を見るとかそういう技術です。演技力とも言えます。
高いレベルのサッカーではこうした「スペーシング」と「個人技」の融合が不可欠になってきます。このような技術論はぱっと見ただけではわからないものが多いので、スローモーションで見直したり、上手な人に聞いたりして発見していくしか無いのです。ですから、footballhackでは些細なテクニックと捉えられるかもしれませんが、しかし大変重要な技術を取り出してひとつひとつ紹介していきます。
現在、個人技の本を執筆中ですがなかなか遅々として進んでいません。楽しみにしている方には申し訳ないですが、もう少しお時間ください。ゾーンディフェンスシリーズは時折レビューを頂いております。レビューを書いて下さった皆様、本当にありがとうございます。こちらもぜひよろしくお願いします。
蹴球計画を見ていて思ったんですが、どんな状況で正対を使えばいいんでしょうか。
使いたい時に使って失敗しながら上手くなってください。
分かりました。それと、いつでも質問しにきてもよろしいでしょうか。