久しぶりにテレビでJリーグを見たら、もっと上手なプレーを見たいなぁと単純に思ったので、上手いプレーとはどういうプレーなのか具体例を上げて解説したいと思います。
今回もお題はリケルメです。
では参考プレーをどうぞ。
やはり神がかってますね。サッカーのエッセンス詰まりまくりです。解説行きます。
ボールを受けます。トラップのところは動画に入ってないんですけどね。多分普通にトラップして相手に詰められるところからプレーがスタートしてます。
この状態で普通の日本人なら、前からも後ろからも寄せられて、中盤の中央で失う怖さで、
「うーわ、完全にハマってるわ。ロスト怖いー」
となるはずです。しかしリケルメはどうしたでしょう。考えてみましょう。
まず軸足を踏み込んで懐姿勢を作って相手を観ます。このときは正対している真正面の敵と駆け引きしています。
次に懐の正の方向へボールを転がします。
上図の白矢印です。正対した相手はリケルメがどういうアクションを起こすか凝視する必要が有るため、止まります。リケルメは相手が止まったタイミングで懐緩急インの方向へ逃げをうちます。この方向は身体操作的に最も動き出しやすく、加速がしやすいので、必ず相手より早く動けます。
また後ろから追ってくるDFを見てみて下さい。彼はリケルメが止まったのを観て、リケルメの右側からボールを奪おうとして右足側に近づこうとします。これも懐の効果です。ボールのある位置とボールを動かしやすい方向のギャップがトリックになっています。
DFを1と2に区別します
懐からボールを出しました。これにより体とボールの位置関係が変わり、DFにとっては守るべき角度が変わります。いわゆる、ドリブルの角度変化ってやつです。
体の方向を変えて逃げをうちます。DF2は完全に逆を取られて遅れています。
DF1に対して左の懐を使うことで(青棒で示した右の軸足を入れて)、視覚トリックを使ってタイミングをずらしつつ、ボールを隠してプロテクトします。さらにアウト逃げと呼ばれる、左足アウトサイドで相手から逃げる方向へのタッチを使って、DF1から離れています。
体が進もうとしそうな方向とボールを押し出す方向が違っています。これによってDFの予測はズレるのです。
今度は右の懐(左の軸足を入れる)と左の手押しでDF2をケアします。
DF2から力を貰い、さらに右足アウトを重心より左側に付くことで内足荷重で体に弧を作って、自然なプレーの流れの中で加速します。DF1は距離を離されたのとDF2がリケルメとバトってくれるのを期待して一瞬傍観モードに入っています。
DF2が完全に殺されてリケルメはドリブルのテンポを上げていきます。
しばらくこんな感じで進むとDF1が対応しに来ます。
ほぼ並走状態まで来ます。
DF1とリケルメの移動方向は同じように見えますが、ここでまたリケルメは角度をズラします。運動方向とボールを転がす方向のズレです。これは足を真っ直ぐ振りながら足首に微妙なタッチの加減で方向を変える高等テクニックです。
角度を変えることでボールを相手から隠します。並走状態のままではボールを奪われる危険があったので、これにより巧くボールをプロテクトしプレースピードをコントロールすることが出来ました。
しかし、DF2が後ろから迫っています。
DF1との距離はまた離れました。DF1はまだきちんと止まれていません。それに対しリケルメは直立に近い姿勢で次の技を繰りだそうとしています。
リケルメは右の懐(左の軸足を入れる)を使ってDF2をケアしています。
DF2はさっき腕でふっ飛ばされたのを警戒してかリケルメにぶつかろうとはしません。
リケルメは余裕のある状態。左の軸足の抜きからのリズム変化で、右足イン・アウトで縦に加速します。
リズム変化でボールを細かく動かしてDF1を引きつけてからアウトで加速。DF1は近づこうとして減速した瞬間にやられたという感じでしょう。リケルメは右の懐姿勢から、静止から加速、しかも膝の抜きを使っているので外見から予測する以上の加速力です。DF1と完全にタイミングが入れ違っています。
抜いたあとのコースも大事です。DF1はこういうコースどりを予想するのが常です。
そこでリケルメは内側にスワーブするように抜いた後のドリブル進路をります。すると、自然な形で相手の前に入り込めます。肩入れなどでDFのコースに割り込むイメージです。
白がボールの軌道です。スワーブするドリブルのコースどりはDFにとって予測しづらいものです。ドリブルはまっすぐ行うという刷り込みがあるからです。そして、そのちょっと内側をリケルメは通ります。上半身を傾けてコーナーをショートカットするイメージでしょうか。
とはいっても得られるリードは僅かですから、相手も必死にユニや腕を引っ張ってきます。そんな相手にはウォーターでいなしてしまいましょう。相手側の肩を後ろに回すようにすると、掴もうとしてくる相手を背中に置き去りにできます。
審判はファールを流す選択をしました。もちろんこれがボックス内ならPK獲得です。
しかしリケルメはこの後のプレーでまたしてもあさっての方向へのパス選択をしています。この人の頭のなかには効率という言葉はないのでしょうか笑。
Jリーグ見てると日本人選手がすぐ外国人選手を探してパスを預けちゃうっていう場面が多くて、あとは判断的に苦しいチャレンジとか。もっとパスを受けてから2タッチ目の転がす角度を工夫すれは自由に楽しく駆け引き出来んじゃないかなとか思っちゃうわけです。ファーストタッチの転がす角度もそうですし。
もちろん、僕自身がそれが出来ないというのも有るんですが、それは子供の頃からの判断習慣が原因だったりすると思うんです。こういう細かい駆け引きがもっと議論されていたらみなさんのサッカーライフがもっと楽しい物になっていくとは思いませんか?
以上がリズム変化、角度変化(蹴球計画参照)、懐理論の複合技で織りなすドリブルの魔法でした。今度、これについて本を書きます。多分1年後には終わっているといいな。。