もう5年も前になりますが、こんなコメントを貰いました。
”全国大会をめざしている高校生です。僕はサイドの選手で手押しを半年ほど練習し少しできるようになりました。ありがとうございます。僕たちのチームはマンマークのチームなんですけど相手がゾーンでしかも蹴ってくるチームに非常に相性が悪いです。なにか対応策はないでしょうか。よろしくお願いします。”
これに対して僕ははっきりとした答えを当時持っていませんでした。しかし、半年前くらいにわかったので、答えさせていただきます。
なぜ、きちんとしたサッカーをしているチームが適当なサッカーにやられるかという問題です。きちんとしたサッカーとは、技術が高く、ボールを比較的長い時間保持でき、ポジションもしっかりとっていて、一人ひとりが状況を認知して相手と駆け引きして戦えるチームであると仮定します。
対して、適当なサッカーとは、亀の子のようにゴール前を固めて、ボールを奪ったら全力クリアで前線に蹴っ飛ばし、前残りしているFWが単独もしくは2〜3人でカウンターを狙う戦術のことです。
これがハマると結構な確率でジャイキリが起きてしまいます。
なぜこれが起こるかというと、「心の緩み」です。
攻めているチームは、「自分たちのほうが上手い」「自分たちのほうが上の立場だ」「自分たちのほうが個の力が強い」「自分たちのほうがゲームを支配している」という自信あるいはおごりのような気持ちを抱きやすいです。
対して守っているチームは「自分たちは劣勢だから頑張らなくてはいけない」「技術や個の力で劣っているのだから気持ちで負けてはいけない」「集中を切らせてはいけない」「わずかなチャンスを生かさなければいけない」という張り詰めた気持ちで戦っています。
すると、なんでもないクリアボールにたいして、カウンターに出るチームのFWは飢えたライオンのようにボールを追いかけるのに比べ、攻めている方のDFは「ウチラのほうが強いからどうせすぐマイボールになる」「あいつ(CB)のほうが足も早いし体の使い方も上手いから、放っておいても1対1で負けることはない」「突破されたとしてもうちのキーパーが最強だからどうせシュートは入らないだろう」そういう気持ちの差が生まれて、それがそのまま出足の遅さや、判断の緩さにつながり、緩慢なプレーからボールが相手のFWに渡って大ピンチになるのです。
結局、攻めているチームの気持ちの奢りが、他人(味方)任せの緩慢なプレーを生んでしまい、それでピンチを招いてしまうのです。これは完全に攻めているチームに責任があります。
こういう事象はマンチェスターシティでもたびたび見られることで、そのたびにペップはタッチラインから激しいアクションで選手を叱責しているのです。ましてや少年や中高生では、これが頻繁に起こるのは不思議な事ではありません。
常にどんな相手でも気持ちを強く持って戦うことはとてもむずかしいことです。最後はひとりひとりが自分でなんとかしなきゃいけないんだ、という気持ちを持つことが大事です。だからこそ指導者やキャプテンの役割は大きいと感じています。